<こころのまよい>

あたしは外人が苦手。

そのせいなのか、英語も苦手。

この学校の入学テスト時は英語がなかったから、自覚はあんまりなかったのだけど…

はじめての授業のとき頭のなか真っ白になっちゃった。

それでずるずると3年間…

すっかり英語の補習の常連となってた。

「古河〜おまえまた間違ってたぞ。」

職員室で英語の先生がため息をつく。

「え、あ、どこですか?」

補習用のプリントを提出に来たのだけど…

「ここと、ここ。」

「あ…」

はう…またやってしまった。

「古河。取り合えずこれでいいが。このままだと高等部に進級してから苦労するぞ。」

心配そうに先生が言う。

「…はい。」

挨拶をして職員室を出る。

職員室前では亜都ちゃんが待ってる。

あ、亜都ちゃんだ。

「亜都ちゃん、お待たせ〜。」

…?誰かと話してる。

あ、グスタフ先輩だ。

「こ、こんにちは。」

あたしはびっくりしつつも挨拶をした。

「こんにちは、結花さん。」

やさしい笑顔で答えてくれた。

嬉しいな♪

でも、そのあとの亜都ちゃんの台詞であたしはわたわた状態になることになった。

先輩にあたしの英語を教えてほしいって言うのだもの!

亜都ちゃぁぁぁん。

しかも先輩はそれを了承しちゃうんだもの。

でも、仕方なさそうにだけど…

嬉しいけど…困るよぉぉぉ。

あう…

亜都ちゃんは満足したようににこにことうなずいて、

「それじゃ、うちは用事があるから♪」

といってあたしをおいって走ってっちゃたよぉ。

亜都ちゃん…あたしどうすればいいのぉ。

あたしはぼーぜんと立ち尽くしてた。

「それじゃあ、どうしましょうか。詳しい事は…。」

先輩が声を掛けたのであたしもわれに帰った。

「あ、あのっ!迷惑じゃないですか?その、家庭教師なんて。」

あたしは先輩の顔を見た。

だって、さっき仕方なさそうな顔が頭に残ってる。

それを思い出したら…顔を下に向けた。

「いえいえ。そんなことはないですよ。結花さんの家庭教師ができるなんて光栄です。」

うにゃ…

ますます申し訳なくなってきた。

「結花さんは私が家庭教師になるのが嫌ですか?」

先輩がもう1度聞いてきた。

「い、いえ…。そんなことはないです。」

嫌なわけないもん!

嬉しいもん。

でも…

やっぱりさっきのがきになるよ〜

変な気持ちで顔が熱い…

「それでは、私が家庭教師になってもいいですか?」

先輩がまた聞いてきた。

いいのかな…

本当にいいのかな?

先輩いまは嫌な顔してない。

だったらいいのかな?

あたしはためらいつつも「はい。」と答えた。

「では、よろしくお願いします。」

先輩はそういって手を差し出した。

う、うにゃぁぁぁぁ

あ、握手?!

あうあう…どうしよう。

こ、断るのもなんだよね?

「こ、こちらこそ。」

あたしはどきどきしながら握手した。

先輩の手は大きくて…

あう…

なに考えてるの!あたしっ!!

うにゃぁぁぁっ

あたしがパニックしてるのも知らずに(当たり前だけど)先輩が話しはじめる。

「それでは、詳しい事は部活が終わった後に話しましょう。

そうですね・・・・、部活が終わったら昇降口で待ってますから一緒に帰りましょう。

そこでこれからどうするか話しましょうか。」

あ、そうだ。

これからのこと話さなきゃいけなかったんだ。

「はい。」

あたしは返事をした。

「では、また部活の後で。」

そういって先輩は歩いていった。

 

「あ〜と〜ちゃ〜ん〜!」

「ゆ、結花。落ち着きいな。ほら結果オーライってことでな。な?」

教室で待ってた亜都ちゃんにあたしは詰め寄ってた。

「結果オーライじゃないよぉ。先輩、変に思ったよう!」

「そうかなぁ?うちが見る限りだとそな事ないと思うんやけど〜」

「…そうなの?」

「うん。結花の気持ちはばれてはおらへんよ。ほんまに。」

「…なら良いけど〜」

亜都ちゃんはにこにことあたしを見た。

「でも、嬉しいやろ?ダグラス先輩に英語教えてもらえる事になって♪」

「うん…ってなに聞くの〜!亜都ちゃん!!」

無意識に答えて顔が赤くなる。

「ごめん、ごめんって〜♪そろそろ、ほら、部活行かんとまずいんとちゃう?」

「あ、ほんとだ。」

あたしはかばんを持つ。

「そういやいつからやの?先輩が家庭教師するのは?」

「今日ね、部活終わったら一緒に帰りながら決めるってことになったよ。」

亜都ちゃんがぴくっと反応した。

「一緒に帰るん♪よかったなぁ〜結花。」

「も〜!亜都ちゃん!!」

「うちも部活いくからほなな〜♪」

にこにこしながら亜都ちゃんは教室を出て行った。

「あう…部活いこ…」

あたしは部活に向った。

正直言って、部活は上の空だった。

これが終わった後の事を考えると…

うにゃぁぁぁぁ!

はう…

緊張だよう。

 

「お、お待たせして、す、すみませんっ!!」

例のごとく…考えすぎて片付けに手間取った…

先輩は昇降口で待ってた。

「私もいまきたとこですから。」

「す、すみません…」

気を使わせちゃったよぅ。

はう…

「行きますか。」

「は、はい。」

先輩の後ろについて歩き出す。

「結花さん?」

「は、はい?なんでしょうか?」

まもなくバス停というところで先輩があたしに声を掛けた。

前回の教訓…ってわけではないけどあたしは少し離れ気味に歩いてた。

「これからどこでお話しますか?家庭教師といっても時間や場所を決めないと…」

「そうですねっ。え、と。先輩の予定に私が会わせます。」

あたしが少し考えてる…

「学校よりは放課後に2時間ほどのほうがいいと思うので問題は場所ですね…」

場所…

学校でもいいけど、誰かに見られるのは恥ずかしいなぁ…

うーん

「私の自宅ですかね…?」

「えっ?」

先輩の家?

そ、それはまずい!

あたし緊張して勉強どころじゃなくなる!!

えっと、えっとそれ以外だと…

「私の家じゃだめですか?」

ばっと顔を上げて先輩を見た。

先輩が驚いたようにあたしを見てる。

だぁぁぁ、あたし何いいだしてるの?

でも、それ以外場所ないもん〜

「…結花さんがそれでよければ構いませんが。」

恥ずかしくて俯いてしまったあたしに先輩が言う。

なんて言ったらいいの…

あたしが言葉を捜してると先輩が続けて話す。

「では、これからどうしますか?今日からでも構いませんが…?」

きょ、今日から?

あたしが驚いて顔を上げる。

「何か予定でも?」

先輩が首をかしげながら尋ねる。

「い、いえっ。ないです!よろしくお願いします!」

あたしは力いっぱい言ったあと恥ずかしくて俯いた。

どうしよう…

 

「ただいまぁ」

「お帰りぃ〜お姉ちゃん〜!」

あたしが玄関で挨拶すると幼稚園に通ってる弟の正基が飛び出してきた。

「ただいま、正基。あ、先輩どうぞ。」

「失礼します。」

あたしがそういって先輩を案内する。

「おきゃくさん?・・・!ま、ままぁ!たいへんだよう!」

先輩の顔を見た正基は慌ててリビングへと走って行った。

…あちゃ。

「どうしたのですか?」

先輩が不思議そうに聞いてきた。

「え…と、あの…」

あたしが何ていようか考えてるうちに正基に引っ張られてお母さんが玄関にきた。

「どうしたの?正基。あら、結花。お帰りな…!」

お母さんも驚いてる。

…だろうなぁ。

外人恐怖症のあたしが外人のしかも男の人を連れてくれば…

「あ、お母さん。部活の先輩で今度英語を教えてもらう事になった、グスタフ先輩。先輩、母と弟です。」

「始めまして。」

「始めまして、ごめんなさいね。結花のためにわざわざ。」

先輩の挨拶でお母さんも慌てて挨拶をした。

「あ、先輩。私の部屋でいいですか?」

「ええ。」

あたしは自分の部屋に案内した。

よかった…この前掃除しといて。

「な、何か。飲み物持ってきます。」

「気を使わなくてもいいですよ。」

先輩はそう言ったけど、あたしはかばんを机に置くとリビングへとむかった。

「結花!どうしたのいったい。」

あたしが予想してた通り、お母さんは飲み物を用意してあたしを待ってた。

そして、質問してきた。

「あのね、いろいろあったんだけど…あとでいい?先輩待たせると行けないし…」

「あ、そうね。でも、あれが完全に直ったわけではないのでしょう?」

「うん、なんか先輩だけ特別なの。」

「それって…、まあ良いわ。夜に聞きましょ。」

さすがにお母さん…すでにばれてる。

「じゃあこれ、持ってくね。」

あたしはトレイを持つと部屋に向った。

「ぼくもいく〜」

「正基はママといっしょにテレビを見てましょ。」

正基がついてこようとしたけどお母さんに止められた。

「ど、どうぞ。」

部屋に戻って先輩に飲み物を差し出す。

「すみません。」

あうあう…

ど、どうすればいいの?

「さて、結花さんは英語はどこが苦手なのですか?」

先輩がやさしく聞く。

「…全部です。」

あたしは消えそうな声で答えた。

「え?」

「英語は全部苦手なんです!」

恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら答える。

「全部って…」

先輩が少し困ったような声で言う。

もう…開き直っちゃえっ!

あたしは黙ったまま机の引出しからファイルを取り出した。

入学してからの英語のテストの答案がファイルしてある。

それを黙って先輩に差し出した。

先輩はそれを受け取って見はじめる。

先輩が見終わるまであたしはずっと下を向いて黙ってた。

恥ずかしくて、逃げ出したいのをぐっと我慢して待ってた。

「…確かに、どこが苦手だかわからなくなってしまいますね。」

一つため息を突いたあと先輩が言った。

はう…

泣きたいよう…

あたしは恥ずかしいのと泣きたくなるのをこらえながら俯いたまま。

そのとき先輩があたしの頭をなでてくれた。

あたしは驚いて顔を上げる。

「ですが、ちゃんと答案はすべて埋めてますし、ケアレスミスなどもありますから、きちんと整理しながら復習すれば大丈夫ですよ。」

先輩がやさしく微笑む。

「ほ、本当ですか?」

「ええ。私が信用できませんか?」

少し残念そうな顔をした。

「そ、そんなっ!信用できないなんて。」

あたしは慌てて否定した。

先輩のこと信用してないわけないもん。

「では、テストで躓いているところを重点的にやっていきましょう。」

「は、はい。お願いします!」

あたしはノートと筆記用具を取り出した。


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