<こいごころ>

「あ、亜都ちゃん…あたし変なのぉ…どうしよう。」

「ゆ、結花?!どうしたん?こんな時間に!もう8時近いで?」

亜都ちゃんが驚いたようにあたしを見る。

そりゃそうだよね、この時間に亜都ちゃんちにきて、制服でしかも顔が真っ赤にしているんだもの。

「あのね、あのね…」

あたしがパニックになっていると亜都ちゃんが、

「とにかくあがりいな、今日は泊まってくんやろ?この時間やし。家に電話してあるん?」

「ま、まだ…」

「じゃあまず電話やな♪」

「う、うん。」

家に電話をかけて亜都ちゃんのうちに泊まることを告げて、そのまま亜都ちゃんの部屋に行った。

「で、何したん?結花」

「あ、あのね…」

あたしは亜都ちゃんにこれまでのいきさつを話した。

でも、あの…あれだけは話さなかった…

グスタフ先輩が…その、あの…

うにゃぁぁぁぁぁぁ!!

考えるだけで頭ショートしそう…

で、あのまま家に帰るのもなんだから亜都ちゃんのうちに来たと…

また、知恵熱になりそうなんだもん…

「…と言うわけなの。」

亜都ちゃんは黙って聞いていた。

時々相槌とかはうっていたけど…

「…ふ、ふふふふ♪」

亜都ちゃんがにまにまと笑ってる。

「な、なに?亜都ちゃん?」

「結花も大人になったんやん♪うち嬉しい〜ムギュ♪」

抱き着いてきた亜都ちゃん。

「ほぇ?な、何が?」

あたしはいまいちよくわからない。

大人ってなに?

顔が熱くなったりするのが?

「結花…ほんまわからんの?」

亜都ちゃんが怪訝そうな顔をした。

「う、うん。なんのことかさっぱり。」

はぁーっと大きなため息を亜都ちゃんはした。

だって…本当にわかんないんだもん。

「結花、それ恋心やん。」

「こいごころ?」

亜都ちゃんがいらいらし始めている。

「あぁぁっ!もう!結花はダグラス先輩の事が好きなんよ!結花が自覚してへんだけで。」

あたしの肩をつかんでぐらぐらさせながら亜都ちゃんが言った。

え…あたしがグスタフ先輩の事が好き?

あ、あう、あう…

「自覚まったくなしやったんだ。ほんまに…」

少し呆れ気味に亜都ちゃんが言った。

「う、うん。」

だ、だって、これが恋なの?

「もしかして…結花、初恋まだやの?」

「へ?は、初恋?」

初恋って…

考えてみたら、あたし誰かを好きになったことって…

「な、ないかも…」

「はぁ〜?なら、余計やな。」

「で、でも。これが恋なの?だって、グスタフ先輩の顔見ると顔が熱くなるだけだよ。」

「結花、この前休んだの、この事考えてたやろ。」

ぎく…

顔に出てしまった…

はぁ〜っとため息をついた亜都ちゃんはにまにましながら話しはじめる。

「それが恋なんよ♪結花、自分でも気づかんうちにダグラス先輩のこと考えてるやろ♪」

ぎく、ぎく…

「そんでもって、部活の練習やて、先輩と顔あわせんのはずかいからやったんとちゃう?」

ぎく、ぎく、ぎく…

はぅぅぅぅぅ。

すべてお見通し状態だようぅ。

「違うか?結花?」

「そ、その通りかも〜」

「そやろ♪そやろ♪」

にこにこしている亜都ちゃん。

「で、でもなんでそんなにずばずばと…」

「ん?これな、隣の継美お姉ちゃんの受け売り♪」

「へぇ?!」

「継美お姉ちゃんやん♪継さんのお姉ちゃん♪」

継さんって…えーっと、あ、この前あった高史那先輩のことだよね…

へぇ〜お姉さんいるんだぁ。

「ちょい、待っててな♪」

そう言うと亜都ちゃんが窓を開ける。

な、何がはじまるの?

「継美おねーちゃん♪おる〜」

隣の窓に呼びかける。

すると、窓が開いて女の人が顔出してきた。

「あら、亜夜都ちゃん。どうしたの?」

「ほら、この前はなしていたこの子が結花やねん♪結花、この人が継美お姉ちゃん♪」

「よろしくね。結花ちゃん。」

「は、はい。よろしくお願いします。」

亜都ちゃんはそのまま継美さんとはなしを始めてしまった。

おそめの夕飯をごちそうになって、亜都ちゃんにパジャマを借りてお布団に入る。

天井を見ながらぼーっと考える。

…はつこい?

…こいごころ?

いまいちよくわかんないや…

それにあくまでもあたしがグスタフ先輩に対してのことであって、先輩もそうかとは限らないわけだし。

迷惑になったら困るもん。

嫌われたくない…

せっかく、お話できるようになったんだもん。

先輩は外国人なのに…なんか、落ちつくんだよね。

うーん、落ちつくとも違うんだけど…

特別って言葉が一番あうのかなぁ…

外人恐怖症が治ったのかな?と思ったのだけどちがうみたいだし…

この前、チャレンジして見事にだめだったんだよね…

あたしは…グスタフ先輩の事がす…き…なのかな?

う、うにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!

そう考えただけで顔が熱くなる…

亜都ちゃんにはこの事は内緒って念を押したし、当分の間はこのままでいいや。

よくわからいままだと迷惑かけそうだし。

うーん、やっぱりよくわかんないや。

それに大体にしてあたしグスタフ先輩のことほとんど知らない。

知らないのに…

「結花、また考えてたやろ…」

脇から亜都ちゃんの声…

「お、起きてたの?!亜都ちゃん。」

びっくりした、てっきり寝たと思ってたのに。

「脇でごそごそ頭振ったりしてれば気になるって。」

あう…そんなことしてたかな?

「ご、ごめんね。」

「ええけど。はよねよ〜考えたって何もはじまらへんって。」

「う、うん。おやすみ。」

考えると深みにはまりそうだから…寝よ。

…でも、今日のあれはなんだったんだろ…?

 

数日後のお昼休み…

あたしは廊下を走っていた。

うにゃぁぁぁぁぁ!

体育の授業に間に合わないかもぉ〜

あたしはプリント提出があったから…亜都ちゃんはさきに行っていた。

パタパタと体育館に向って走っていた。

…う?

なんか視線が…誰か見てる?

気のせいかとは思ったのだけど、走るのをやめて気になるほうを見る。

あ、あれ〜?

グスタフ先輩だ。

ちょっと離れたところに先輩が立ってた。

先輩はあたしと目があうとちょっと驚いたような顔してる。

あたしはちょっと考えたけど、先輩の方に走って行った。

「こんにちは、グスタフ先輩。」

頭を下げながら、少し顔が熱いけどどもらずに挨拶ができた。

走ってたせいだって思われるだろうし。

「こんにちは。これから体育の授業ですか?」

先輩もやさしく微笑んだ。

「あ、はい。先輩は移動教室ですか?」

「ええ、そうですよ。」

「そうなんですか。」

…話しかけといて会話が続かない。

そのとき予鈴が鳴った。

うにゃっ!予鈴だ!!

「それじゃぁ、先輩失礼します。」

あたしはもう1度挨拶をしてそのまま体育館に向った。

最近みてなかったから…お話もできたし嬉しいな♪

パタパタ走りながら思っていた。

う?これもこいごころって言うのかな?


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